毛を曲げた状態から元に戻るときの硬さや素材によって名称が異なります。
兼剛筆
筆の中では、一番硬い筆を言います。
山馬(さんば)「ネパールのカモシカの毛」を使用した筆で、書道の作品書きなど、特に強い擦れの線を表現するときに使われます。
現在はワシントン条約で輸入が禁止されているため、本物はほどんど目にすることができません。
現在「山馬筆」として販売されている筆は、馬の尻尾や鹿の毛を使用したものが多いのが実状です。
山馬毛を判断するときは、1本の毛を取り出し、毛の中ほどを折ります。
折り目を爪でしごき毛をもう一度真っ直ぐに戻した後、折り目のところを再び爪でしごくと、本物は毛が切れません。偽物は折り目から毛が切れます。
兼毛筆
筆の硬さでは、硬いほうに属します。
組み合わせにより、兼剛にもなりますし、柔らかい筆にもなります。
外見的には、赤毛や黒い(リスなど)の筆ですが中には白い色をしたものもあります。
毛の種類としては、タヌキ・鹿・馬毛の毛を使い、筆先の戻りも良いので初心者用として使われていました。
ただし、現在は国内のタヌキはほどんど獲れなくなったので、タヌキの筆はあまり作られていません。
イタチやコリンスキーに馬尾脇などを混ぜて、楷書用などに特化した書道家向けの筆も作られます。
純白羊毛筆
中国産の山羊毛(さんようもう)と白馬の尾脇の毛を使った筆で、筆先のまとまりと戻りの良いのが特徴です。
羊毛と馬毛の配合により硬さが変わるので、硬めの馬毛が多いほど書道の初心者には向いています。
の良い毛質の中に少量の馬尾脇を入れることで使いやすい筆になります。(草書用など)
以前は国内の馬毛の材料としての農耕馬がたくさんいましたが、みなトラクターに入れ替わったため、国産の馬毛は殆ど手に入らなくなりました。
現在の馬毛はカナダ・アメリカなどから輸入されています。
馬毛を使わずにナイロンの毛を代用して作られていることも多いです…。
純羊毛筆
中国産の山羊毛(さんようもう)を使用した筆です。
山羊毛は、毛の生えている部位により細微光峰・細光峰・粗光峰・細長峰・細直峰・老光峰・白突峰・黄突峰など15種以上に細分化されて輸入されます。
これらの毛を組み合わせることにより、墨の含みや・かすれ・起筆のかたちに変化をつけていきます。
純羊毛筆は長さや筆の太さ・筆先の形状で作品の表現が変わるため、使いこなす技術が必要になります。
ナイロン筆
学童用の筆として、ここ数年使われています。
職人としては、筆の原料にナイロンの毛は使うべきでないと思います。
保墨(墨の保ち具合)や筆先のまとまり、線の美しさなど、毛筆は自然界の動物の毛を最大限利用したすばらしい筆記用具です。
筆工房亀井では、職人の誇りとしてナイロンは使いません。